タッチパネルインターフェース市場の拡大とPCAP
皆さんが日常で見かけるタッチパネル製品の大部分には、投影型静電容量方式（以下PCAP）と呼ばれる構造のタッチパネルが採用されています。これはスマートフォンやタブレットでの採用を皮切りに、その光線透過率の高さとマルチタッチに起因する使いやすい操作感によってあっという間に様々な製品で使用されるようになりました。PCAP以前は抵抗膜方式と言われる構造のタッチパネルが産業機械や交通車輛、アミューズメントなどで使用されるインターフェースとしてすそ野を広げていましたがそれらにとり替わる形でPCAPは現在もシェアを広げています。ただしPCAPタッチパネルは万能の技術ではありません。特定の状況下では使用に適さない事があります。
水濡れや手袋、電気ノイズに対してPCAPは対策が必要
正常に動作しないシチュエーションはいくつか考えられます。例えば
- 手袋などを使用し、直接タッチパネルに接触しない場合
- 電気的なノイズによって正常なタッチ位置の検出を阻害される場合。
- 液体の付着などによって容量結合が起こり、タッチを誤検出してしまう場合。
いずれも産業環境ではありふれた状況であり、抵抗膜方式タッチパネルであれば問題にならない要因によってPCAPタッチパネルは機能不全に陥るためハード/ソフト面からの対策が必要になります。医療現場や食品工場などでは頻繁に発生する事象のためこれらの用途でのタッチパネル採用は必ずしも簡単ではありませんでした。
抵抗膜の安定性とPCAPの操作感を両立したタッチパネル
REQUIRED OF A RELIABLE INDUSTRIAL TOUCHMONITOR
MTR-G SERIES
DMCでは、PCAPが正常に動作しない、あるいは環境に合わせた独自に行う対策などの課題や問題を解決するべく抵抗膜方式を元にした独自タッチパネル MTR-Gシリーズを開発。製品シリーズとしてラインアップしています。
抵抗膜方式の特性はそのままに、2点以上のタッチ、軽いタッチ感、ピンチイン/アウト/回転などのジェスチャー操作といったPCAPの長所を取り込むことであらゆる環境と用途にご利用いただけます。またPCAPと比べてもコストパフォーマンスに優れているためこれまで導入に踏み切れなかった環境でも比較的簡単にお使いいただく事ができます。
MTR-Gは4線式抵抗膜の構造を元にしていますが、大きく異なる点があります。従来の4線式抵抗膜では電極数がXYそれぞれ1個ずつであるため2点以上が押下された場合に座標を検知することは困難です。弊社の抵抗膜ジェスチャーコントローラソリューションでは独自アルゴリズムによって1点タッチと2点タッチを識別し、2点タッチがされた場合は、得られる電圧値からタッチされている2点の場所を予測して出力していますが、正確な座標を検出する事ができないためShiftキー操作やFnキー操作のような安全動作で使用される2点入力に対応しておりません。一方MTR-Gはタッチパネル全体を縦方向と横方向で計180のセル（10.1“以上のスクエアの場合）に分割しております。専用コントローラがそれぞれのセル上のタッチ入力情報を検出することで、高い精度での2点押しを実現しています。
従来の4線式抵抗膜方式
DMCの4線セル式抵抗膜方式
MTR-GはDMCが開発したフィルムとガラスが接触する際の摩擦を減らす構造により、従来の抵抗膜方式タッチパネルよりも少ない押圧で入力することが可能になっています。さらに上部基板には、表面が滑らかで指が滑りやすいフィルムを採用することで、フリックやピンチ操作がしやすくなっています。DMC従来の抵抗膜方式タッチパネル製品、ASTシリーズの動作荷重仕様0.05N～0.8Nと比較して、0.03N～0.3Nとなっており、約半分の荷重で入力できるようになっています。
MTR-Gは前述の2点タッチと軽いタッチ感によりPCAPのようなジェスチャー操作を行うことが出来ます。設計図や地図の拡大縮小、ホイール操作などの幅広い操作入力をインターフェースに導入することができます。産業用途でもより安定性が高く、費用対効果でも優れた操作性を実現しています。
フリック（左）/パン（右）
ピンチ（左）/回転（右）
抵抗膜マルチタッチの導入を推奨する環境とは？
スマートフォンが普及している昨今では、普段使い慣れた軽い操作感やジェスチャー操作がユーザから求められており、抵抗膜方式からPCAPへの切り替えも増えています。しかし前述の通り、PCAPには、抵抗膜方式では不要であった周辺ノイズへの配慮や対策が必要なため、大幅な設計変更が必要になります。またノイズが多い設置環境では、現地でコントローラの調整が必要な場合もあり、サポート費用がかかります。DMCのMTR-Gシリーズは従来と同じ抵抗膜方式タッチパネルの設計で、PCAPと同じインターフェースを実現することができます。上記によりMTR-Gシリーズはタッチパネルとして特にPCAPの採用が難しい環境で、なおかつジェスチャー操作やShiftキー操作など自由度の高いGUI構成を求められるアプリケーションにてご活用いただけます。
DMCでは他にもスマホのような軽いタッチ操作ができる軽荷重タッチパネルセンサー「LSTシリーズ」をラインアップしています。MTR-G同様にジェスチャー操作をおこなうことができます。
